La mondialisation dangereuse – Alexandre del Valle dans Le Samedi Politique
アレクサンドル・デルヴァルは『危険なグローバリゼーション La mondialisation dangereuse』の共同著者。著者は右派の地政学者。
「自由テレビ TVLibertée」はフランスの右派が運営するチャンネル。
アレクサンドル・デルヴァルが二つの西洋やディープステートについて語る
二つの西洋
Q:オキシダン(Occident 西洋)という言葉が多用されていますが、定義を教えて下さい。
DV:良い質問です。西洋という言葉にはその具体的な生まれ育ちが含まれています。ギリシャ・ローマの古代文明、哲学や法律や建築、原始ゲルマン文化それにユダヤキリスト教文明や一神教の伝統、中世封建社会の歴史等々あらゆる具体的な内容が含まれます。脚が地に着いた、具体性を持ったものなのです。
一方アメリカやデイープステートが自称するもう一つの西洋があります。自由貿易とか資金や人の移動の自由とか、普遍的人権とか男女平等とかです。こちらの西洋概念は具体的西洋から抽出されたもので、土地や文化に束縛されずに世界中に広がり得ます。
Q:西洋はもともと文化や伝統や歴史と結びついた概念なのですね。
DV:そうです。アングロサクソンはアメリカ大陸支配に当たって先行するスペイン・ポルトガルと違う道を選びました。原住民を消去して自分たちの文明、規範を持ち込んだのです。メキシコ人の遺伝子の90%は原住民のそれという研究がありますが北米では混血無しの排除でした。
アングロサクソン風の西洋は土地や文化に根付いていませんから当然アイデンティティーが有りません。ですから自分たちの制度が最良のものだと信じ他文化圏にも押し付けようとします。アラブの春や湾岸戦争やシリア空爆などみなそうです。マクロン大統領が最後にはアングロサクソン流世界主義者だと判明したのもこの結果でした。
三匹の危険な肉食獣
世界支配への欲望を公然と表している勢力が現在三つ存在します。(1)アングロサクソン・グローバリズム(2)支那帝国主義(3)イスラムの三つです。
アングロサクソン・グローバリズムはディープステートとも呼ばれています。国の一つとして世界支配を企むのではなく、国家を超越した闇の権力として世界支配を目指します。陰謀好きな性格ですが正当化の哲学も用意してあります。それが西欧民主主義、自由主義、人権などの普遍性主張です。人類を幸福にする普遍的価値である民主主義を実現する正当性を並べ立てますが、それらは全て具体性を欠く、歴史文化土地宗教などとつながりの薄いものです。リベラル、規制撤廃、差別反対などが代表的です。
支那帝国(膨張)主義は長い間、直接影響を受ける周辺諸国を除いては、無視されてきました。無視以上に19世紀のアヘン戦争やその後の半植民地化などの罪滅ぼしの意識からか、大目に見られてきたのです。 サイバー分野においてアメリカと技術を競うようになってから初めて支那の危険性についての意識が生まれてきました。 アングロサクソングローバリズムと違い、支那文明は西洋文明と系統を全くことにしますので 西洋化する可能性はありません。
イスラムは政治思想としての面を持ちイスラム信者共同体であるウンマを全世界に広げることによって 世界を支配することを意図しています。この点がアングロサクソングローバリズムとは違い信仰という人間の内面まで支配しようとしますので、他の2つの勢力よりも 厳格な支配を目指しているといえます。 ウンマの主権者はカリフと呼ばれ長い間トルコ皇帝がその役についてきました。最近のトルコのエルドアン大統領のキプロスに対する強硬な態度はトルコがイスラム世界のリーダーとしての地位に再びつこうとしているその表れかもしれません。
西洋をひるませるもの
Q: 三匹の肉食獣を前にしてなぜヨーロッパは戦わないのでしょうか?
DV: ヨーロッパが精神的に武装解除されてしまったからです。 奴隷貿易、植民地支配、人種差別などの悪行によってヨーロッパの罪は許されないほど深いのだと言う意識を植え付けられてしまったからです。 面白いことにこの西洋の罪悪感からの解放はアングロ・サクソン・グローバリズムの本拠であるアメリカで始まりました。トランプ前大統領の当選です。 アメリカはグローバリズムの本拠地ですが同時にアメリカの土着性と言うものも消えずに残っていました。トランプ前大統領の代表する足が地に着いた具体的なアメリカの土着性。
このアメリカの動きと 呼応するかのようにヨーロッパに於いても愛国主義者が活発な言論活動を展開しています。もちろん愛国派の言論活動が完全に罪悪感を払拭したとは言えません。まだ グローバリスト、リベラリスト、エコロジスト、人権派等は強力なまま残っているからです。
同盟
Q: 国際政治の本舞台となった太平洋地域ではファイブアイズなどのアングロサクソン同盟が活発に動いています。これに対してフランスはどのように動くべきでしょうか?
DV: グローバリゼーションが直接戦争を引き起こす事はありません。国の中で経済的格差を生み出す事はありますが、国家間の戦争を起こす事はありません。またイスラムは国家間の戦争を起こすだけの実力はまだありません。 フランスやドイツの一部分を食いちぎって社会的騒乱、内乱を起こす実力しかありません。
危険なのはサイバー武装を遂げたチャイナです。このためフランスはロシアとの伝統的な友好関係を復活させ支那に対する備えとしなければなりません。 ウクライナ問題でロシアを刺激してはいけません。 ロシアは流れは違いますが同じキリスト教国ですからヨーロッパ化する可能性があります。
支那がヨーロッパ化する可能性は絶対にありません。19世紀以来西洋によって受けた恨みを晴らそうと復讐の機会を狙っているのが今の支那です。
(終わり)
コメント
フランス右派の思想は歴史を感じさせてとても面白いですね。
日本の左派は子供じみていて歴史や文明を感じさせないのが魅力的ではないですね。
右派社会党の時はまだ大人の論客がいたのでしょうか。
江藤淳と曽根益の戦後占領政策についての対談を読みましたが曽根益は民社党の長老であったが
大人である感じを受けました。
自民党よりも野党の退潮が問題ですね。