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エリック・ゼムールがフランスの工業とグローバリズムについて語る

Éric Zemmour en conférence à Lille
エリック・ゼムールのリール市講演会
(*)リールはフランス北部フランドル地方の中心都市。ベルギーと国境を接していて、ノール県(北県)の県庁所在地
(*)檀上上部のスライド ”La France n’a pas dit son dernier mot” は「フランスはその最後の言葉(臨終の意もある)を言っていない」の意味です。

全体で80分、要約したゼムールの講演は2分頃から始まります。それまでの冒頭部は熱狂的な聴衆の「ぜムール、ゼムール!」の大歓声。彼の人気ぶりが分かります。言葉の知識不要ですから是非見て下さい。
40分頃から聴衆との質疑応答。質疑の部分で彼の強調したのは、(1)サービス産業重視は間違いだった。今後は製造業の復活を図る。(2)今までの右派陣営は支持層がサラリーマン中産階級に偏り過ぎていた。今後は愛国ブルジョワとも連携してゆくの二点でした。

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エリック・ゼムールのリール市講演会

リールと北部地方

私はパリ北郊外のベッドタウンで育ちましたが北部地方には格別の思いがあります。個人的にもリール市長、ヴァランシエンヌ市長と面識がありますし、何より車や鉄道の車窓から眺める北部の景色が素晴らしい。フランスの歴史が濃縮されています。中世カペ王朝時代のカテドラル、砦や城塞、ボーバンが設計した要塞軍事施設それに一九世紀産業革命時代の遺構が何より素晴らしい。

実際一九世紀のフランス工業はここ北部地方にのみ存在していました。大資本家、優秀な技術者、訓練された労働者が十分にいたのは皆さんの北部地方だけだった。フランスの他の地方ではここほど工業が繁栄していなかった。一八世紀に始まった英国の産業革命により他の欧州諸国の産業は吹き飛ばされた中で、フランス北部地方は持ちこたえました。英国の工業化は欧州諸国家の序列を変えましたし、戦争のやり方も変えてしまった。フランスの工業化を担ったのは皆さん方北部の人間でした。頭が良くて勇敢で働き者で真面目という評判の北部人は鉱山業、繊維産業そして製鉄業を支えました。
ドイツがこれを見逃す筈はありません。ドイツ陸軍は常に北部諸地方から侵略を開始しました。1918年の様に退却する場合は北部産業を破壊してからドイツへ戻ったのです。

グローバリズム

しかしこの40年前から現れた敵はドイツ陸軍よりたちの悪いものでした。グローバリズムです。グローバリズムとは何でしょうか?簡単に言えば、豊かな国の貧乏人が貧しい国の金持ちを助ける仕組みです。貧しい国であれ豊かな国であれ輸出入で儲けられる金持ちにとっては良い仕組みです。貧しい国の 貧乏人にとっても多少はサラリーが上がりますから悪い仕組みではありません。 一番割を食うのは豊かな国の貧乏人です。 グローバリゼーションの結果、豊かな国でも貧しい国でも社会の中の所得格差は広がります。

フランスから支那への技術移転が始まったとき、 将来その技術がコピーされる心配がありました。 政治家たちは「彼らがビーチサンダルを作るなら、われわれはエアバスを作れば良い」と言って心配はしませんでした。 現実はどうなったでしょうか?支那人は我々の作るものは何でも作ります。しかも安い値段で作ります。
ミッテラン大統領以来左翼の政権が続いてきました。なぜ国民は左翼に票を入れたのでしょうか? 私にはわかります。国民は漠然たる不安を抱いたのです。戦後営々と積み重ねてきた福祉国家がグローバリゼーションによって壊されることを。 福祉政策を維持することを左翼に期待したのです。
しかし左翼はこの国民の期待を裏切りました。世界人類の平等と進歩のため、世界人類の幸福のために左翼はフランス国民を裏切りました。
一方右翼はどうかと言えば右翼もフランス国民を裏切りました。更に悪いのは、左翼は理想のために裏切りましたが右翼は利益のために裏切ったことです。 だから皆さんは左翼、次いで右翼にと二回裏切られたことになります。市場を社会の中央に置き国家の役割を縮小させるグローバリゼーションによって北部地方が衰弱したらばどうなるでしょうか。北部地方が衰弱すると言う事はフランス全体の工業が衰弱すると言うことになります。 フランス経済の中で工業の占める割合は低下しています。1980年工業は国富の24%を占めていました。 2021年には12%に低下しました。工業の衰弱は歴史の趨勢である以上やむを得ないとする議論がありますが違います。ドイツは1980年から2021年まで工業が国富の25%を占めている割合を維持しています。
グロバリぜーションの結果は明瞭です。荒廃した田園、大量失業、経済の出血死。

バイバイ

フランスの国是は自由平等博愛です。博愛について見てみましょう。博愛は全人類におよぶのか。普遍主義に取り憑かれた法律家は当然差別無しに適用されると言います。結果はどうでしょう。生活保護の受給率は平均8%です。外国人の受給率は14%。これが非ヨーロッパ諸国からの移民の場合は40%です。政治難民申請者には直ちに最低年金に近い金額が支給されます。ド・ゴール将軍が何故フランス植民地の独立に好意的であり熱心だったのか、将軍に仕えたアラン・ペイルフィットが書いています。ド・ゴールはアフリカの人口爆発を恐れていた。そして難民がフランス本土に殺到しないようにアフリカ各地を独立させたのだと。独立後は外国ですからフランス人に扶養義務はありません。「後はバイバイだよ」とド・ゴールは語っていたそうです。

我々もバイバイしようではありませんか!
(終わり)

 

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